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おすすめの本
 

No.716  令和4年1月

『半藤一利語りつくした戦争と平和』『下北沢であの日の君と待ち合わせ』
半藤 一利/[述] 保阪 正康/監修 東京新聞

 「歴史探偵」を名乗り、日本近現代史に関する著作を多く発表した半藤一利が亡くなって一年。本書は東京新聞・中日新聞の紙上で、盟友の保阪正康や田口ランディ、古川隆久、中西進との対談をまとめたものです。著者は「大事なことはすべて昭和史に書いてある」と語り、五つの教訓を挙げました。東京大空襲を逃げ惑い、疎開先で機銃掃射を浴び、死を覚悟した15歳の体験は「絶対に戦争をしてはいけないんだ」という気持ちにつながります。「問い直す戦争 忘れてならない教訓」「分断と格差の世界 歴史から学ぶものは」「昭和天皇実録どう読み解く」等の7対談は日米開戦から80年を過ぎ、戦争の悲惨さ、愚かさを知る世代がいなくなった今、半藤さんの「遺言」として読んでほしいという願いが込められています。
                   (T.M)

 
 

神田 茜/著 光文社

 服飾デザイナーを夢見て19歳の時上京した理夏でしたが、借金をかかえて、専門学校への足も遠のき、とうとう寮を追い出されてしまいました。行き着いたのは下北沢の古いアパート。そこで、劇団員の秋子とアパートの元住人だったちはると出会います。お金もない、才能も見いだせないと自信を失っていた理夏にとって彼女たちと過ごす日々は濃厚で輝いて見えました。ところが、ある勘違いによって三人の友情は壊れたまま時は過ぎていきます。30年経ったある日、当時アパートの隣人だった尾村雪江から理夏のもとに手紙が届きます。そこには、三人の仲違いの原因となった騒動の真相が綴られていました。理夏は苦い思い出と懐かしさの入り混じった下北沢の地へ再び降り立ちます。時の流れとともに、少女から大人の女性となった彼女たちの揺れ動く心情がせつない物語です。
                 (Y.O)



『児童養護施設という私のおうち』『ひとりでカラカサさしてゆく』
田中 れいか/著 旬報社

 児童養護施設については、多くの方が小説やドラマで描かれるものでイメージを作っています。この本は7歳から11年間、実際に児童養護施設で過ごした著者が、リアルな体験を書き綴ったものです。施設に来る子ども達はそれぞれ理由や環境が異なり、同じ屋根の下で生活することには楽しさや難しさがあります。また、施設にいる人、出てしまった人が抱えている悩みや課題にも言及しています。全編明るい語り口で、暗いイメージを払拭していますので、行政の取組を含めた「社会的養護」の仕組みを知るための入門書と言える一冊です。
                  (K.S)


江國 香織/著 新潮社

 80代の男女3人がホテルの一室で猟銃自殺するところから物語は始まります。三人は20代のころ出版社で共に働いて意気投合し、その後別々の道に進んでも、連絡を絶やさず定期的に会い続けていました。一人は末期がんで余命宣告を受けていました。一人は身寄りがなく借金を抱えていました。一人は「もう十分生きました」という遺書を残しました。友人や家族たちは突然の死、しかもニュースで世間を騒がす凄惨な方法を選んだことがまったく理解できずに戸惑います。心に亡くなった人への思いを抱きながら、それぞれの生活は続きます。残された人たちの日常を描いた小説です。
                  (N.K)



『ローカルおやつの本』『青嵐の庭にすわる』
グラフィック社編集部/編 グラフィック社

 日本各地の銘菓の数々、ふるさとならではの愛されるお菓子たち。一口かじれば懐かしく、幼かったあの頃の思い出が甦る…。
 県民のソウルフード、“ローカル菓子”を一挙にご紹介。郷土菓子とよばれるものから、新たにヒットし、スーパーで見かけるいつものお菓子まで、愛されお菓子が勢ぞろいです。
 地域で変わる素材や味付け、歴史から垣間見るお菓子の成り立ちなど、日本の豊かなおやつ文化を学んでみませんか?
                  (Y.N)


 

森下 典子/著 文藝春秋

 作家である著者が自身原作の「日日是好日」の映画に茶道指導のスタッフとして参加した日々を綴っています。お茶の経験もなく、道具も用語も知らない映画製作スタッフ達が著者の指導のもと、茶道の理解を深めながら映画の製作に奮闘する姿が描かれています。
 本作の冒頭には映画撮影に使用した稽古場や道具の写真が掲載されています。様々な道具があり、細かい決まりがあるお茶の世界。ルールやタブーがあり、専門用語が飛び交う映画の世界。二つの世界の違った特色を本書で感じることができます。
                  (M.O)