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おすすめの本
 

No.707  令和3年8月

『勝負魂』『喫茶店で松本隆さんから聞いたこと』
古賀 稔彦/著 ベースボール・マガジン社

 本書はバルセロナ五輪で金メダルを獲得した柔道家の古賀稔彦さんが柔道を始めてから、32歳で現役生活を引退するまでの出来事を振り返って記されています。夢を見捨てず、「勝負師」として柔道に捧げてきた生きざまが描かれています。
 著者自身が多くの困難を抱えながらも現役を続けてこられてきたのには、どのような理由があったのでしょうか。前向きな姿勢や不屈の精神についての率直な言葉が私たちを鼓舞し、勇気づけてくれます。
                 (M.O)
 山下 賢二/著 夏葉社

 今年で作詞家活動50周年となるミュージシャンの松本隆さん。孤独について、才能について、恋について等々、本書で現在の境地が独白形式で語られます。
「ど真ん中に豪速球というのに憧れる。歌謡曲の詩を書いても、それを狙う。いつも自分に言い聞かすのは『カーブでごまかさないように』っていうこと。」との言葉からも、数多くの名曲を生み出してきたヒットメーカーとしての姿が浮かび上がります。
 穏やかに物事を達観しつつ、意思のある力強い言葉に満ちた一冊です。
                    (K.A)
『伝える準備』『ミュージアムグッズのチカラ』
藤井 貴彦 /著  ディスカヴァー・トゥエンティワン

 著者は日本テレビアナウンサー。日々、自分の言葉がどんな印象を与えるかを精査しながら発信しています。言葉は道具、どう使うかが大切で、発する前によく考えることが大切です。コロナ禍において他者への批判が渦巻き、ささくれだった言葉で他人を傷つける日常。「伝える準備」とは、伝える前に伝わり方を想像することです。ほんの少し準備をするだけで、周りの雰囲気が変えられるという著者は、何気なく発する言葉や準備なく使用した言葉が、どんな影響を与えるかを考えてほしいと願います。5行だけの日記を書く、寝る前に「やることリスト」を作る等を続けてきた著者。言葉の積み重ねが自分を作るのです。
                 (T.M)
大澤 夏美/著 国書刊行会

  ミュージアムグッズやショップは博物館のエンドロール。と宣言する作者。ただの雑貨と侮るなかれ、ミュージアムグッズは博物館での想い出を持ちかえるためのツールであり、社会教育施設としての使命を伝えるための手段でもあるのです。
  昆虫館の「羽化(うか)る!御守」や歴史博物館の琥珀糖で再現した石垣のお菓子など、可愛い、面白い見た目の中には、学術的に正しい情報がめいっぱい詰まっています。
 開発の苦労話や学芸員の収蔵品にかける愛情を知ることで、「紹介されているグッズが欲しい!」とうきうきし、それが収蔵されているミュージアムに足を運びたくなることうけあいです。
                    (Y.M)
『ケアマネジャーはらはら日記』『巨鳥の影』
 岸山 真理子/著 フォレスト出版

 ケアマネジャーは2000年に生まれた職業です。介護を必要とする高齢者などが介護保険サービスを受けられるように計画を立てたり調整をしたりする仕事です。
 著者の岸山さんは40歳を過ぎてから、安定した収入とやりがいのある仕事を求めて、通信教育で学びケアマネジャーの資格を取得しました。念願の職業に就いたのですが、そこは想像以上に大変な現場でした。利用者からどなられたり、突然の呼び出しで残業が続いたり、職場ではパワハラあり、と毎日が戦いです。それでも、生涯現役で働き続けたいと奮闘する著者の様子が描かれています。
                (N.K)


長岡 弘樹/著  徳間書店 

 缶詰工場で窃盗事件が起き、そこで働いていたスペイン人の男が逮捕されました。刑事の田所はその男に違和感を覚え、ほかに真犯人がいる気がしてなりません。しかし、男は自ら犯行を認めました。事件から一年後、田所は新婚旅行でスペインのある島へ出かけます。当時の事件を思い出していると、男に初めて会った時と、男の取り調べ中に聞いた鳥の鳴き声のような音をその地で耳にするのでした。その音にこそ事件の真相が潜んでいました。
 表題作を含む8編の短編小説で、鳥や魚などの生き物が犯罪を解決するカギとして巧みに使われているところが見どころです。
                   (Y.O)