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おすすめの本
 

No.706  令和3年8月

『歴史のミカタ』『きみは知らない』
井上 章一/著  磯田 道史/著  祥伝社

 日本の歴史教育で惜しまれるのは、歴史のミカタを指南しないことだと磯田氏は語ります。受験用に暗記する歴史用語は知識として大切。しかし歴史は暗記物ではありません。歴史の正体は、史実の集合体ではなく「物のミカタ」、過去のどの部分を見るか、どのように見るかで出来上がっているのです。歴史は旅に似ていて、歴史のミカタも人それぞれ。本書は希代の歴史探検家の井上氏と「歴史のミカタ」について対談をしたものです。歴史が動く時、歴史は繰り返されるのか、日本史の特徴など、上司と部下の関係でもある二人の対談は、自分の歴史のミカタを大切にする人のためになる本だと断言します。おすすめ書籍の付録つきです。
(T.M)
   チョン・イヒョン/著  新泉社

 ソウルの高級住宅街、ある日曜日の午後、一人留守番をしていたはずの11歳の娘ユジが行方不明になりました。家出なのか、事故なのか、それとも誘拐なのか
 母親はその頃、あるところに出かけていました。父親は違法ビジネスに関わっていたため警察に通報するのをいやがりました。姉は貧乏なボーイフレンドが身代金目当てに誘拐したのだと思い込みました。兄はそれまで無関心だった妹を必死で探しはじめました。一見幸せそうな一家ですが、家族のそれぞれに秘密があり、誰もが孤独を抱え悩んでいることが明かされていきます。
 著者は現代韓国を舞台に次々と小説を描き、韓国で多くの人から共感を得ています。

                 (N.K)
『室町は今日もハードボイルド』『ツタンカーメンの心臓』
清水 克行/著  新潮社

 呪う僧侶に、戦う農民。実は恐ろしい驚きの日本人像が、今明らかに!
 室町時代は、武士が大きな力を得た時代でした。また、幕府によって定められた法があるにも関わらず、各地の武家による法、町や村における独自の法秩序が対等に併存する、ある意味無秩序な時代でもありました。そんな室町時代の面白さを、歴史番組の解説や時代考証を手がける筆者が熱く語ります。
 さて、ここで一つなぞなぞ。「母には二度会うけれど、父には一度も会わないもの」は何でしょう?現代人には解けないその答えと理由は本書でどうぞ!

(A.K)
福士 俊哉/著  KADOKAWA 

 聖東大学の研究室にいる先輩から小栗陽のもとへエジプトでの発掘調査への誘いの連絡が入ります。大学時代にツタンカーメンの研究をしていた彼にとっては願ってもない話で、一度はあきらめた研究職に夢を膨らませエジプトの地へ降り立ちます。先輩講師の日下美羽と調査リーダーの桐生准教授と共に調査に乗り出し、ほどなく頭部のない数体のミイラと、ミイラの内臓を入れる容器「カノポス」を発見しました。心躍らせる小栗たちでしたが、この発掘調査にはある目論見が隠されていたのでした。
 神秘の国エジプトを舞台に、ツタンカーメンの死の真相に迫るストーリー展開に胸が高鳴ります。
(Y.O)
『トラッシュ』『明日は結婚式』
 増島 拓哉/著  集英社

 ディープ・ウェブ内のとあるチャットページで知り合った、6人の訳アリの若者たち。一度死を決意したことのある彼らは「怖いものなど無い」と、法の網を掻い潜る裁かれぬ罪人たちへの報復を始めます。たくさんの人を苦しめた罪人への復讐を、「世直し」と称し実行していく彼ら。しかし、6人の間にも次第に歪みが生じます。若者6人の行動は国を巻き込んで加速していき…。屑を屑によって制する、彼らはどのような結末を迎えるのでしょうか。
(A.K)

小路 幸也/著  祥伝社 

 ごく普通に愛を育んできた二人の結婚式前日の様子を、当人と家族の視点から描いています。結婚式の前夜、二人にそれぞれの家族から想っていたこと、伝えたかったことが明かされます。
 パン屋とサラリーマン家庭と、両家の環境は違っていても、思いやりがあり、とても温かい二つの家庭の物語です。
 結婚式を前日に控えた男女と、それぞれの家族の心情が心にしみてくる一冊です。
(M.O)