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おすすめの本
 

No.704 令和3年7月

『まちづくりと図書館』『日本疫病図説』
大串 夏身/著  青弓社

 全国各地でまちづくりの政策として策定された「中心市街地活性化基本計画」の中に、図書館が記載されているものが103件もあります。その内容や成果について様々な視点から細かく調査し、検証した内容をまとめた一冊となっています。その結果、図書館には人々が集い、語り合い、交流し、そこから活動が生まれて、知的な成果が地域社会にもたらされる施設になり得るとのことで、まちづくりの中心に据えるべきと語っています。
 これからのまちづくりと図書館を関連性を考えるための研究書です。
(K.S)

畑中 章宏/著  笠間書院

 疫病は、もののけや悪鬼・怨霊といった目に見えない存在によって、もたらされたと信じられてきた時代。多くの人々の祈りが信仰を育み、さらに疫病除け玩具やまじない絵に、病魔退散の願いを込めました。
 赤ベコや張子虎、予言獣が描かれた錦絵など、多くの工芸品や芸術品が誕生した背景には、疫病と芸術文化、民俗風習との深い関わりも見えてきます。  切実な祈願と創造力に満ちた表現から、いま、私たちは何を学ぶべきでしょうか。
(Y.N)
『謎の多い山』 『母ちゃんのフラフープ』
柴田 昭隆/著 芸文堂

 50年近く登山を趣味とし、150座もの山を踏破してきた著者が、英彦山や多良岳など九州の9つの名山を紹介しています。本書では気の合った仲間たちと無理しない程度の山に登り、頂上で昼食を楽しみ温泉につかります。そして、帰った後にじっくりとその山にまつわる歴史などを図書館やネットで調べ、登山を2度楽しむのをルーティンとしています。かつて山は神が宿る場所とされ社寺がありましたが、戦火で焼け落ち文献が残ってないことが多くあります。そこで、調べても解明できない部分は、著者なりの推理や仮説を入れた読み物として書かれています。
(N.K)
田村 淳/著  ブックマン 

 芸能界に憧れ、18歳で上京した著者。30年経った今では、バラエティ番組や情報番組などでマルチに活躍しています。若いころはやんちゃだった著者を、優しく、時には厳しく育て、支えてくれた母は大きな存在でした。しかし、2015年にその母が病に侵され、昨年の夏に他界。母との別れは容赦なく訪れ、はかり知れない悲しみの淵に追いやられましたが、母が自分の人生の始末をつけ、母らしく最期を迎えた姿を目の当たりにし、著者自身の死生観が変わりました。
 大切な人を亡くした著者が、今こそ家族や身近な人と死について考え、語り合って欲しいとの願いを込めた一冊です。
(Y.O)
『戦争というもの』『光をえがく人』
 半藤 一利/著  PHP研究所

 令和3年1月、昭和史研究の第一人者として知られる半藤一利さんが亡くなりました。太平洋戦争開戦から80年、東京大空襲の被害者の生き残りの一人として、著者は改めて戦争の悲惨さを伝える意味を考えます。本書は戦争下においてわずかに発せられた人間的ないい言葉を、将来のための教訓としてまとめたものです。山本五十六、山本常朝、国民学校の子どもの標語など。戦争により人間は被害者になり、同時に傍観者に、加害者にもなる、そこに戦争の恐ろしさがあるのです。「歴史探偵」と呼ばれた著者が後世に残すべき言葉とは。「人間の眼は歴史を学ぶことではじめて開く」という著者の思いがこもった最後の1冊です。
(T.M)

一色さゆり/著  講談社 

 ミャンマー料理店の常連である私は、ある日、店主が過去に反政府運動に参加し、監獄に収監されていた頃の話を聞くことに。それは料理店の壁に掛けてある絵に繋がる物語でした。店主が絵の作者と出会い、体験したこととは。ぽつりぽつりと店主の記憶が明かされていきます。
 本書は5つの作品による短編小説集となっています。全ての話にアートが深く関わっていてそれぞれ違う形の人生と美術の関わりについて描かれています。      
(M.O)