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おすすめの本
 

No.701 令和3年5月

『非弁護人』『キリギリスのしあわせ』
月村 了衛/著  徳間書店

 東京地検特捜部の検事として、国会議員が絡む事件の真相を追求しようとしていた宗光は、組織の圧力と裏切りにより逮捕されました。刑期を終えても法曹界へ戻ることができない宗光。しかし、法知識にしがみつく生き方しかできない彼は、裏社会からの仕事を請負い、いつしか非弁護人と呼ばれるようになります。
 ある日、ふとしたきっかけで出会ったパキスタン人の少年から、突然いなくなった同級生を探してほしいと依頼を受け、調査にのりだしました。失踪の裏にある日本社会の闇と、凶悪な犯罪者をあぶりだす宗光の手腕は圧巻です。        (Y.O)

須川 亜紀子/著 青弓社

 

 森のはずれのキリギリスの店にはなんでも売っていました。服や食べ物といった商品のほかに、時間や絶望やしあわせも売っています。キリギリスは買い物客をがっかりさせないために一生懸命品揃えをし、時には遠くまで配達もしました。それでも、店に売っていないものがあるにちがいないと、心配で眠れない夜がありました。店を閉めて旅に出ようかと考えることもありました。動物が買い物をする様子を楽しみながら読んだり「こんな人いるなあ」と風刺的に読んだりすることもできる大人のための童話です。
                 (N.K)

『アニメと戦争』『文豪たちの住宅事情』
藤津 亮太/著  日本評論社

 日本の総人口のうち八割が戦後生まれとなった現在では、戦争は実体験としてではなく、メディア体験を通じて知るものとなってきています。本書はアニメーションの作品を一つひとつとりあげながら、太平洋戦争を体験した世代が作った作品、戦争を知らない世代が作り上げたフィクションの戦争など、それぞれの時代の戦争に対するアプローチを考えます。
 興味深かったのが、水木しげる原作「ゲゲゲの鬼太郎」の「妖花(ようか)」というエピソード。今までに5回もアニメ化されているのですが放映された時代とともにエピソードが変わっているのです。変わらないことを伝えたいがため、変わらざるをえなかったエピソードの経緯。ぜひご自身の目でごらんください。
                (Y.M)
住んだ家、住んだ土地から見えてくる文豪たちの人生と文学
田村 景子/編著 小堀 洋平/他著 笠間書院

 住宅は、人が生きるためにもっとも基本的な生活手段の一つです。また住宅は、文豪にとって社会とつながる基点であり、作品を産み出す場でもあるのです。本書は、ふるさとへの愛憎・放浪しながら書く・執筆の場を定めて・終の棲家への4部に分けて、島崎藤村、宮沢賢治、林芙美子、志賀直哉、松本清張、水上勉等、お馴染みの文豪30人が登場。それぞれの住宅事情とは?どこで誰と暮らし、何を考え生きたのか?本書は、文豪たちが時代の現実とかかわり、その中からどんな作品を世に送り出したのかを知るきっかけとなるでしょう。         (T.M)
『東京ディストピア日記』『愛に始まり、愛に終わる』
 桜庭 一樹/著 河出書房新社

 本書では、2020年1月から2021年1月までの著者の暮らしを綴った日記です。この一年間は新型コロナウイルスの影響で、多くの人が今まで経験したことのない生活を送りました。
 著者も全てに戸惑いながら、いつ元に戻るか分からない世の中に対応して生きています。コロナウイルスに関する日本の政治等のニュースや、海外情勢が詳しく書かれていて、一年間を振り返ることもできます。著者自身がニュース等の様々な物事への本音を記していて、共感できることも多くありました。
                 (M.O) 
瀬戸内 寂聴/著 宝島社

 「人は愛するために生まれてきたのです。」生きてきて「死」を目の前にし、つくづく想うのは、この一言です。と、説いている著者は数えで100歳。新聞や雑誌のインタビュー、法話の中から108点の言葉とメッセージが綴られています。これまで生きてこられた言葉の重みとユーモアにふれると、悩んでいたことが「あっそうだよね。」って、明るく前向きな気持ちにさせてくれます。写真付きでとても読みやすいです。多くの人の道しるべとなること請け合いです。
                  (Y.K)