予約について

おすすめの本
 

No.696 令和3年3月

『人之彼岸』『ほたるいしマジカルランド』
郝 景芳/著 早川書房

 人工知能サービスプログラム「分身」が誕生した世界。開発者であるレン・イーはその完成に全てを賭けていました。しかし、恋人との食事も感情を持たない「分身」で済ませようとするほど、彼の心はその開発に囚われてしまっており…。完全無欠なAI(=人工知能)と人の“心”、私たちが必要とするのはどちらなのでしょうか。
 その他にも、AIがもたらす、私たち人類の悲哀や愛情、葛藤が描かれた6つの短編とエッセイ2編を収録。人類とAIが共存する世界にはどのような未来が待っているのでしょう。

(A.K)

寺地 はるな/著  ポプラ社

 大阪の北部にある蛍石市の古い住宅やマンションが並ぶ閑静な場所に、遊園地「ほたるいしマジカルランド」があります。訪れる人々を楽しませてくれる遊園地の裏側では、様々な悩みを抱えながら働く人々がいました。
 自分に自信がもてず、日々を漫然と過ごしているインフォメーション係の萩原紗英、自分が好きなアトラクションの担当者を羨む村瀬草、自らまいた種で幼いわが子と別れた過去を持つ清掃係の篠塚八重子…等々。そんな従業員たちが、自らの生き方を模索しながら仕事に取り組む姿を描いた連作短編集です。

                  (Y.O)

『ワンさぶ子の怠惰な冒険』『最大効果のウォーキング』
宮下 奈都/著 光文社

 「羊と鋼の森」や「静かな雨」などの作品で知られる著者。そんな著者の3年間の日常を描いた家族エッセイが、雑誌『Mart』の連載から書籍になりました。
 福井県に住む宮下家は、旦那、長男、次男、長女の5人家族。そして白い柴犬のワンさぶ子。なにげない日常ですが、3年間という日々は、変わらないものと変わっていくものがあります。子どもたちの受験や上京、自身の旅行や音楽との出会い。それぞれが自分の道を歩き始めます。
 思わずクスッと笑えて、ほっこりする話が多いため、読んでいると温かい気持ちになります。
(A.S)
中野ジェームズ修一/著 CCCメディアハウス

 運動不足の解消と言えば、ウォーキング!
 これといって運動をしたことがない方でも手軽に始められるウォーキングですが、ただ歩くだけでは一生歩ける体は手に入りません。
 この本では、ウォーキングをする方に知っておいてほしい3つのこと、また、最大の効果を引き出す歩き方や室内で手軽にできる筋トレなどを紹介しています。
 手ごろな薄さで手に取りやすく、文字も大きめで読みやすくなっています。健康のために歩いているという方も、これから始めようという方も、ぜひご覧ください。

(A.K)
『この世の息 歌人・河野裕子論』『老後レス社会』
大森静佳  KADOKAWA

・手をのべてあなたとあなたに触れたきに
          息が足りないこの世の息が
など名歌を残し2010年に64歳で亡くなった歌人、河野裕子。本書は河野が所属していた短歌結社「塔」で短歌を学んだ歌人の大森静佳が、河野の遺した歌集15冊を読み込み、歌の魅力について考えた論考集です。時系列に沿って丁寧に歌を読み込んでいくことで、短歌という輪郭をなぞって歌人、河野裕子を浮彫にしていきます。大森は1989年生まれ、先達の歌に触れてその魅力の元とは、と必死にたどっていく文章には、ああ、本当に慕っていたのだなぁ。と深い思慕を感じずにはいられません。
(Y.M)
朝日新聞特別取材班/著 祥伝社

 2040年問題、日本の人口は65歳以上の高齢者が35%になり、労働力不足が深刻化すると推測されています。死ぬまで働かないと生きていけない時代になるのでしょうか?悠々自適な老後は過去のことになるのでしょうか?
 今すでに「働かなくては生きていけない」高齢者が増えており、ある警備会社では70歳以上が8割を占めています。一方、経済的な心配はなくとも望んで働き続けている高齢者もいます。
 若者から中年層、そして高齢者と様々な条件で不安を抱えながら働いている人たちを取材し、これからの時代の働き方について問題を提起する一冊です。

(N.K)