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おすすめの本
 

No.694 令和3年2月

『不可逆少年』『ダーリンの進化論~わが家の仁義ある戦い~』
五十嵐 律人/著 講談社

 三人の大人が惨殺されるシーンの動画がネットに流れ世間を揺るがします。犯人は狐の面をかぶった13歳の少女で、現場には実の姉も拘束され毒殺されかけました。「フォックス事件」と呼ばれたその殺人事件は、偶然にも加害者の姉と被害者の家族が高校の同級生という不可解な事実が浮上します。
 家庭裁判所調査官の瀬良真昼は、フォックス事件に関わった少年らと別の事件で接見することになり、その真相に近づくのでした。
 弁護士の著者が描くミステリーなだけに、少年法など司法制度についても考えさせられます。
(Y.O)

高嶋 ちさ子/著 小学館

 もしかして面白トークで人気のタレント?いえいえ、著者は格調高いクラッシック音楽を、最も身近にしたヴァイオリニストです。

 あの毒舌が育まれた驚愕の家庭環境、かまってちゃんの父とヘビメタ好きの夫などなど、愉快痛快、弱肉強食の高嶋ワールドが全開です。
 コロナ禍の中で、将来の不安を抱えていても、それでも、前を向いて明るく進んでいけるのは、きっと家族がいるから……。
 当たり前の毎日が、大切に思えてしまう一冊です。
(Y.N)
『料理なんて愛なんて』『明治の一発屋芸人たち』
佐々木 愛/著 文藝春秋

 よく”料理は愛情”といいますが、優花は料理が嫌いです。バレンタインにずっと好きだった真島に高級チョコを購入して渡すも振られてしまいます。真島のタイプは料理上手な人。
 優花は、料理をしなくてもいいように、そして真島を忘れるために飲食店が揃う商店街の近くに引っ越します。
 その後、初めて「みりん」を購入してみたり、カレーや親子丼ぶりを作ってみたりと自炊に挑戦しますが、やっぱり料理が好きになれません。料理が嫌い、でも料理が好きになりたい。料理が嫌いな優花の愛情は、どこにあるのでしょうか。
 ”料理は愛情”この言葉に苦しめられる主人公が自分には愛がないのかと模索する物語です。
(A.S)
永嶺 重敏/著 勉誠出版

 奇抜な格好に独特のフレーズで一躍人気者となるも、次第に姿を消していく一発屋芸人。
 明治時代にも「ステテコの円遊」「ヘラヘラの万橋」「ラッパの円太郎」「テケレツの談志」と言われ、日本中で大ブームを起こしながら姿を消していった4人の落語家がいました。
 のちに珍芸四天王と呼ばれることになる彼らは、テレビやラジオがない時代にどのような芸で日本中に大ブームを起こし消えていったのでしょうか。
 元祖一発屋芸人ともいえる彼らが活躍した時代背景とともに、民衆芸能の事情を掘り下げた一冊です。
(Y.E)
『辞典語辞典』『そこに工場があるかぎり』
見坊 行徳/文 稲川 智樹/文
いのうえ さきこ/絵 誠文堂新光社

 辞書、特に国語辞典にまつわる言葉を集めたこの辞典。一見、近寄りがたい題名ですね。
 しかし、一旦開いてみると、どこを読んでも面白く、興味深い項目がいっぱいです。解説を読むまで、本当に辞書との関連が想像できない項目もあります。
 また、『新明解国語辞典』の作り方も掲載されており、読めば読むほど辞典の世界にハマる仕掛けになっています。
 この本を読み終える頃には、きっと辞書を引くことが楽しくなることでしょう。見開きに必ず一つは入っている、脱力系のイラストも目を楽しませてくれます。
(A.K)
小川 洋子/著 集英社

 ものを作る、という行為は他の動物にはない、人間だけが獲得した能力です。その能力を発揮するために存在する工場には魅力があふれています。建物自体の面白さ、独自の秩序、機械や道具の精密さ、そして人間の手の繊細さ。
 子どもの頃から工場にあこがれ続けた著者が、長年の工場愛を作家として自分の言葉で記したいと書いた本です。金属に細い穴を開ける工場、江崎グリコ、乳母車、鉛筆と「どうやって作るのだろう?面白そう」と著者が興味を持った6つの工場を取材しています。すべての工場には、一心に作業に専念するプロの姿がありました。
(N.K)