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おすすめの本
 

No.692 令和3年1月

『運命の絵』『新しい「足」のトリセツ』
中野京子/著 文藝春秋

 抜けるような青い空の下で口を開け、自分の番が来るまで讃美歌をうたい続ける16人の修道女たち、彼女らの上に光るギロチンの刃に気づくとき、「自分の番」というのが処刑の瞬間であることがわかります。1794年7月カルメル修道会の修道女16人がギロチンで命を絶たれた痛ましい史実をもとにした絵画はその名も『ギロチン』。どうして彼女らは処刑されなければならなかったのか。いかにしてその場面は後世に残り絵画となったのか。その事件をもとに残された衝撃のオペラ作品の演出とは。一枚の絵画に隠されている多くの情報に気づくと、絵画そのものが語りだすかのようです。31枚の名画の奥にあるドラマを紐解いていきます。             (Y.M)

下北沢病院医師団/著 日経BPマーケティング 


 最近、自分の足をご覧になったことがありますか?いつも目に入ってくる手とは違って、ついつい見逃しがちになってしまう足。
 しかしながら、靴ずれが少しでも出来てしまうと、足のありがたみにようやく気が付くのではないでしょうか。
 この本では、年を取っても自分の足で歩き続けることに役立つ方法が写真やイラストを交えて分かりやすく解説されています。
 繊細でガマン強い足は、元気な生活の大切なパートナーです。人生100年時代を生き生きと過ごすために、セルフケアをしてみませんか?
                  (A.K)
『ふつうでない時をふつうに生きる』『見えない星に耳を澄ませて』
岸本 葉子/著 中央公論新社

 新型ウイルスの流行により、例年とは違う生活を余儀なくされている現在。これまでの当たり前が通用しない世の中だからこそ、「新しい常識を作り出し、自分のペースを発見するチャンスかも」と著者は語ります。
 リモートワークや自粛生活など、非日常の中で生きていかねばならないとき、人は新しい知識を得る…まさにピンチはチャンス!毎日起こる些細な問題さえ愛おしく、「ふつうの暮らし」のありがたみを感じさせてくれる、日常を切り取ったエッセイ集です。
                   (A.K)
香月 夕花/著 KADOKAWA

 絶望の中にいる少女、作り上げた自分を愛するパーソナルスタイリストの女性、無気力に生きる中年男性らが訪れるのは音楽療法を行っている診療所。音大生の真尋は、ピアノを専攻しながら実習先である三上先生の診療所で音楽療法士を志します。クライエントの傷ついた心の音に耳を澄ませますが、母親との確執など次第に自分自身と向き合うことになり、真尋の抱えた「見えない星」も明らかになっていきます。
 それぞれが問題を抱えながらも、それでも逃げずに生き抜いていく様子が伝わってきます。(A・S)
『じい散歩』『オビー』
藤野 千夜/著 双葉社

 90歳目前の明石新平は、朝目覚めるとオリジナルの体操をし、ヨーグルト中心の健康朝食をとり、天気のいい日には花の手入れ、そして好きな散歩に出かけるのを日課としています。悠々自適な生活に見えますが、実は問題も抱えています。一つ下の妻・英子は認知症の症状が出始め、夫が浮気をしていると疑っています。三人の息子たちはみな独身で、将来の見通しは不透明な様子。
 老々介護や8050問題といった深刻な社会問題が見え隠れする家族の日常と、新平と英子のこれまでの人生をユーモアを交えて描いた小説です。
                   (Y.O)
キム ヘジン/著 書肆侃侃房

 主人公の「私」は物流倉庫のバイトでオビーに出会いました。オビーは常にイヤホンを挿して人との会話を受け付けず、ここまで、と線を引き、その境界を必死で守っているように見えました。「私」は二人きりになった時に「少し話さない?」と声をかけましたが、「話すことなんてありません。」とよどみない返事がきました。
 そんなオビーを意外なところで見つけました。たくさんの人が個人で生配信をし、閲覧数でお金を稼ぐサイトに登場していたのです。
 韓国の若手作家が、現代の若者の日常を描いた短編小説集です。           (N.K)