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おすすめの本
 

No.685 令和2年9月

『1964東京ブラックホール』『彼女が天使でなくなる日』
貴志 謙介/著 NHK出版

 1964年、アジア地域で初開催となった昭和の東京オリンピックは、戦後復興の象徴とも言われています。巨額の費用を投じ、新幹線や高速道路が整備され、経済大国・日本を世界にアピールし、日本は先進国の仲間入りを果たしました。
 一見、華やかで希望に満ち溢れた時代のように当時の様子が伝えられていますが、その背景には大きな闇が存在していました。
 貧困、劣悪な労働環境、政治腐敗、戦後最悪の不況など、多くの資料からその闇を炙り出しています。
 56年前の東京の闇は、今の日本が抱える課題とそっくりで、脅威を感じずにはいられません。

                 (Y・O) 

寺地 はるな/著 角川春樹事務所

 九州北部にある星母島で託児所兼民宿の「民宿えとう」を営んでいる主人公の千尋。千尋は早くに母を亡くし、父に捨てられた「モライゴ」で、星母島のみんなの子どもとして育てられました。
 島には母子岩と呼ばれる名所があり、家族や友達のことで悩んでいる人たちが次々とご利益を求めて訪れます。そこを訪れるお客さんと触れ合うことで、千尋は自分の現状や過去を見つめていきます。
 親子をテーマにしたそれぞれのエピソードを読み進めると、最後にこのタイトルに思わず納得してしまいます。著者は佐賀県出身です。

                  (A・S) 
『口福のレシピ』『魔女 ちいさな手のひら事典』
原田 ひ香/著 小学館

 インターネットで料理のレシピを公開している駆け出しの料理研究家は、令和元年の品川留希子。一方、ある家で女中奉公しているのは昭和二年の山田しずえ。唐突に走り出す2人の女性の物語。
 共通点は料理のみ。生きる時間軸すら違う2人の物語は、しずえが作ったあるレシピを通じて重なった時、本当の姿を現します。
 留希子が料理研究家として、そして家族との関係に悩む一人の人間として前進しようとする姿が見どころです。また、物語の合間に登場する多彩でおいしそうなオカズも必見です。

             (A.K)   
ドミニク・フゥフェル/著 グラフィック社

 今の時代、魔女が実在すると思っている人はほぼ皆無でしょう。けれども長い間魔女の存在は人々に信じられていました。原因不明の伝染病や自然災害が科学的に解明されていなかった中世ヨーロッパでは、そうした災いは魔女の仕業とされました。魔女狩りの犠牲者は3万~5万人にのぼるそうです。
 人々に忌み嫌われてきた魔女に関する情報がたっぷり入った一冊です。レトロで愛くるしいイラストがそ
れぞれのページを飾っています。
                  (N.K)
『文系でもよくわかる 日常の不思議を物理学で知る』『コータリン&サイバラの介護の絵本』
松原隆彦/著 山と渓谷社

 著者は素粒子原子核研究所で主に宇宙について研究をしていますが、この本では生活に身近な「なぜ」を物理学で解明していきます。自転車はなぜ倒れないかとか、遠心力の正体など、物理の授業で学ぶような基本的なことから、スマートフォンで会話ができたり、指紋で認証ができたりする最新の技術を解説しています。
 また、最近よく目にする、おでこに近づけて計測する非接触型の体温計や、通過しただけで体温を表示するサーモグラフィも取り上げています。これらは自動ドアなどにも使われている赤外線センサーと同じ仕組みなのです。
 専門的知識が無くても、物理学の解説を読むことで一つひとつ不思議が解決していきます。

   

                               (K.S)
神足裕司/著 西原理恵子/絵  文藝春秋 

 『もう助からない』と宣告を受け奇跡的に回復する著者(コ―タリン)は、9年前くも膜下出血で倒れ、半身麻痺・失語症の後遺症が残る、介護5の要介護者。
 現在も、家族やいろんな方に支えられリハビリの日々を送っています。リハビリ当初は、食べたことも分からない、食べ方さえ忘れるほどでした。そんな著者が、積極的に介護食や最新の車椅子を試したり、ハワイへ旅をしたりするポジティブな日常が書かれています。漫画家の西原氏(サイバラ)との関係性もたのしく綴られています。
 介護の経験が無い方はもちろん、経験がある方にも、絵本として読みやすい内容です。

                (Y.K)