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おすすめの本
 

No.682 令和2年8月

『仕事本』『凪に溺れる』
左右社編集部/編 左右社

 2020年4月、コロナウィルスの影響で世界中の人々の働き方が変わりました。仕事がなくなったり、やり方が変わったり、突然忙しくなったり。この本は20代から80代の様々な職業の人たち77人が、仕事をテーマに生活がどう変わったかを日記として記したものです。
 長年計画していたドイツ移住を断念し日本の美大で学びなおすことを決めたイラストレーター。少人数になった子どもたちの寂しさを感じながら自らも疲れを感じる保育士。
 個人ではどうすることもできない時代の流れの中で、真剣に仕事に向き合う人々の様子が描かれています。

                 (N.K) 

青羽 悠/著 PHP研究所

 無名のアーティストの楽曲がネットで話題に。正体を探る声があがる最中、ボーカル死亡のニュースが発表されます。彼はどんな人物だったのか。なぜ死ななければならなかったのか。それぞれの登場人物の視点から、アーティストの生涯が解き明かされてゆきます。
 平等に与えられる人生の時間なのに才能は不平等。私たちは憧れに届かなくても、それぞれの場所で生きていかなくてはなりません。
  これは、選ばれた誰かを語ることで浮かび上がってくる選ばれなかった人たちの物語。「叶うことない予感を抱いて、生きていくのを許してほしい。」ひとりの登場人物が放つ言葉が胸にささります。
                 (Y.M) 
『「読む」って、どんなこと?』『悪霊じいちゃん風雲録』
高橋 源一郎/著 NHK出版

 「誰でも読むことはできる、って、ほんとうなんだろうか」という疑問をきっかけに、本文のないタイトルのみの詩を読むことからこの本は始まります。 小学校の国語の教科書に載っている文章の「読み方」では、おかしなことが起きてくると筆者は語ります。おかしなこととはどんなことなのか、6コマの授業に見立て、順番に解説されています。 この本を読み終えた時、文章に対する新たな洞察力が芽生えていることでしょう。2時間で修了できる「読み方」の指南書、いかがですか。     
                        (A.K)

                
輪渡 颯介/著 早川書房

 大店の薬種屋の跡取り息子・伊勢次はとても怖がり。それなのに霊が見えてしまうのです。そんな伊勢次の悩みは、亡くなった祖父の佐五平がいつも姿を現し、人助けをするように強要してくることでした。貧乏御家人の武井文七郎も伊勢次と同様に、霊が見え亡霊の祖父から難癖をつけられていました。そんな二人が、町中に起きている幽霊騒動の解明にのり出します。
 亡霊の祖父と孫のやり取りは可笑しく、伊勢次と文七郎の性格の違うコンビが幽霊の正体を暴く姿が痛快な時代小説です。
                        (Y.O)
『捨て猫のプリンアラモード』『「人物相関図」で読み解く日本史の真相』
麻宮 ゆり子/著 角川春樹事務所

 昭和37年、東京の浅草。17歳の郷子が集団就職先の工場から逃げ出すところから話は始まります。2年前に群馬から上京した郷子ですが、生家にも帰れず就職先は最悪な状況でした。
 しかし、逃亡中に「洋食バー高野」の料理長とおかみの淑子に拾われます。そこでの生活で、今まで知らなかった人の温かさや料理の美味しさに触れる郷子。初めて食べるカツサンドやプリンアラモードにも思わず感動します。
 自分の“居場所”を見つけ、新しい仲間や環境で頑張っている主人公の様子に心温まる上京物語です。 
                                (A.S)
後藤 寿一/著  PHPエディターズ・グループ 

 歴史には多くの分岐点があります。
 日本でも、古くは乙巳の変(大化の改新)や源平の争い。信長暗殺、秀吉の天下統一、その後の家康。 そして明治維新や第一次世界大戦、第二次世界大戦など、後世に大きな影響を与えた分岐点が存在します。
 これら歴史の分岐点では、多くの人や国の思惑や利害関係が複雑に絡んでいます。
 本書では、この複雑に絡んだ関係を人物相関図を用いて説明し、エポックメイキングな歴史事象を分かりやすく解説した日本の歴史の振り返りに適した1冊です。
                     (Y.E)