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おすすめの本
 

No.674 令和2年4月

『ちょこっと、つまみ』『「春秋」うちあけ話』
阿川 佐和子ほか/著  河出書房新社

 
つまみ・・・。なんて魅惑的な響きなのでしょう。
 檀一雄は「酒飲みにだけ与えられた天の恩恵のようなもの」といい、澁澤龍彦は「おつまみって言えば、何だっておつまみになる」という次第。
 その日の気分や財布の中身で変わるものだから、迷ったり選んだりするのも、これまた至福のひとときと言えるでしょう。
 運命の一皿や外せない駅弁、食卓の向こうにみえる晩酌の風景や老舗のこだわりの味…。
 つまみにまつわる、作家やエッセイストたちの「旨い」エッセイ集です。
                 (Y.N)
大島 三緒/著  日本経済新聞出版社

 新聞朝刊の1面の下部にあるコラムに目を通しておられますか。朝日新聞の「天声人語」、地元紙の「有明抄」などはファンも多いですね。
 「春秋」は日経朝刊のコラムで、その書き手の一人である著者が、執筆する際に心がけていることや日常の暮らしぶりを本書に綴っています。本を読んでも映画を見ても、ついついコラムのネタ探しをしてしまい、純粋に楽しむことが出来ない因果な稼業と嘆いています。その反面でそのネタ探しを楽しんでいる様も見られます。
 限られた文字数の中に、時事や旬の話題を盛り込み、ストンと着地点のある終わり方で読み手を惹きつける職人技に脱帽です。
 (Y.O)
『きらいな母を看取れますか?
    関係が悪い母娘の最終章』
『リスからアリへの手紙』
寺田 和代/著  主婦の友社

 子どもの頃から虐待を受けてきたなど、母親との関係に困難を抱えた娘たちは、老親介護にどう対応しているのでしょうか。
 この本では7人の当事者の話が綴られています。親からの愛情を受けることなく生きづらさを抱えた果てに「母の介護はできない」「母と娘として向き合うことはもうない」「親子なのだから赦せと期待するのは傲慢」…と思いを語ります。
 老親の扶養義務を拒否することや、引取義務を拒否することについて弁護士の意見も掲載されています。
(N.K)
トーン・テレヘン/著 柳瀬 尚紀/訳
河出書房新社

 みなさんは手紙を書く機会はありますか?
 この物語では、森に棲んでいる個性豊かな動物たち…リス君やアリさん、カタツムリ君、象さんなどが手紙を交わしていきます。その手紙は風が相手に届けてくれます。動物たちが手紙で自分の素直な思いを表し、やり取りの中でさらに友情も育まれていく様子が描かれている1冊です。
 面と向かっては伝えることができなくても、手紙だと自分の気持ちを伝えることができるというのは私たちも同じだなと思わされます。
 また、表紙や挿し絵のイラストも可愛らしく、見どころです。
 (A.S)
『旅ごはん』『愛すべき音大生の生態』
小川 糸/著  白泉社

 バルト三国のひとつラトビアを中心に、ヨーロッパの国々を旅した小川さん。それぞれの国々で出会ったもの、そこでとった食事について、小川さんならではの美しい文章でまとめられています。
 ルップマイゼ、ドーサといった普段聞きなれない食べ物の名前や、砂糖漬け松ぼっくり、ピンク色の冷たいスープなど、味の予想がしがたい食べ物が多数登場します。しかし、見たことすらない食べ物の筈が、小川さんの手にかかると、不思議なことに香りまでただよってくるような気分になってしまいます。
 美味しいものを目の当たりにした心躍る臨場感は、お腹を減らす可能性がありますが、家にいながら海外の風に吹かれたい方にお勧めの一冊です。
 
(A.K)
辛酸 なめ子/著  PHP エディターズ・グループ

 
幼少の頃から厳しいレッスンを受け、様々なコンクールに出場。親も我が子を一流に育てるべく決して安くない道具を揃え、レッスンにつき合い、コンクールへと足を運ぶ。
 やがて数々の経歴を携え音楽大学へ。そして卒業後は世界で活躍する音楽家に。と、いう人ばかりではないと思われる音大生を、楽器の演奏にあこがれながらも挫折した作家と音大に入れなかった担当者の二人が取材し生態を暴いた1冊。
 これを読めば音大生のイメージが変わる・・・・かも。
(Y.E)