副市長の本棚 バックナンバー vol.1

伊万里市の泉秀樹副市長がおすすめする本の書評を掲載しています。
このページは以前に紹介された本が並んでいます。


平成30年9月 『狼の牙を折れ』門田隆将/著 小学館  「本の詳細

  三菱重工ビルを始めとする連続企業爆破事件の犯人グループを追う警視庁の刑事達の執念と奮闘を描いたスリルあふれるノンフィクションです。
 卑劣な犯人を必ず逮捕するという強い意志に基づき、犯人に繋がる手掛かりを追い求め、見落としがちな事実をもとに緻密で大胆、粘り強い捜査を展開する姿勢は感動的ですらあります。
 面白さに引き込まれて私は短時間で読み終えてしまいましたが、警察・公安関係の方には(仕事に誇りを感じるという意味で)特におすすめです。


平成30年8月 『葉隠三百年の陰謀』井沢元彦/著 徳間書店  「本の詳細

 藩主に対しては無条件に忠義を尽くせと説く『葉隠』の教えの根源には、龍造寺から鍋島への藩主交代時の、ある秘められたいきさつがあった。
 有名な鍋島藩の化け猫騒動の謎を、歴史に名を残す佐賀藩士達が大きな犠牲を出し、苦労しながらも解き明かしていきます。さらに、佐賀にゆかりの深い地名などが出てくるので興味深く、佐賀藩の複雑な家系の中であるべき後継者とは?などを考えさせられます。
 また、ミステリ-的で探偵小説風のストーリー展開も面白いと思います。


平成30年8月 『二つの祖国 上・中・下』山崎豊子/著 新潮社  「上巻の詳細中巻の詳細下巻の詳細

 この小説は太平洋戦争時の米国による日系人強制収容、原爆投下それから東京裁判という3つの重いテーマを取り上げており、その中には私たちが学校やマスコミ等から教えられた知識にない事も多くあります。
 長編小説で読むのに非常な労力が要りますが、挑戦されてはいかがでしょう。

 原爆についての部分で私の記憶に残っているのは、概略以下のところです。
 『終戦直後、米国のマスコミが真っ先に押し掛けたのは広島でした。原爆の威力や破壊力を全世界に誇示せんがためです。多くの報道陣を乗せて広島に向かうバスの中は大賑わいだったといいます。ところが現地をつぶさに見た彼らを乗せた帰りのバスは、皆が黙り込んでしまい水を打ったように静かだったといいます。原爆による広島の被害のあまりの悲惨さに衝撃を受け、誰もが言葉を失ったからです。』
 これ以降、米国は広島や長崎の原爆の被害や実態を人々の目から隠すことに注力するようになります。


平成30年7月 『空白の天気図』柳田邦男/著 新潮社  本の詳細

 昭和20年8月6日、広島市に1発の原子爆弾が投下されました。この本はノンフィクションであり、その運命の日前後の広島市の様子、原爆投下直後の市街地の惨状、人々の有り様が克明に描かれており、私が読んだ本の中では原爆の実像を最も詳しく知ることができる本だと思います。
 広島市の気象台も原爆の爆風などで壊滅的な被害を受けたため、その後当分の間、広島県民に気象情報を提供することができなくなりました。
 このため終戦まもなくの9月、中国・四国地方を直撃した強力な台風(枕崎台風)により、その接近を知らされなかった広島県民は台風に備えることができず、原爆の惨禍もさめぬまま再び甚大な被害を受けることになります。
 あの年、広島に起こったでき事を克明に記録した1冊です。


平成30年7月 『風の中のマリア』百田尚樹/著 講談社  本の詳細

  この本を読んでもう5年位経ちますが、大人が読んでも、また小学校高学年以上の児童なら読んで面白いと思える物語です。オオスズメバチが主人公ですが、その生態や周りの虫達との関わりの描写が実に細かくて、自然や昆虫に興味を持てるきっかけになる本だと思います。
 私は2年程前、旅行で妻と島根県松江市にある松江城を訪れたのですが、お城の庭を歩いていたら1本の大きな木からブーンという音が聞こえてきました。近づいてみるとその木には根元近くに洞(ほら)があり、その洞の中で沢山のミツバチが入口におしりを向けて羽を動かしていました。洞の入口付近には数匹のスズメバチが中を伺っています。
 「ああ、あの光景と同じだな。」と本の1場面に思い当たり、感動した記憶があります。
 物語の最後まで読み終わった時、一匹の虫のことで涙がこぼれそうになるのも、めったに経験できるものじゃありませんよ。
 是非、皆さんに読んでほしいと思います。


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