令和元年8月号


ノロウェイの黒牛(くろうし)~イギリス・スコットランドのむかしばなし~

なかがわちひろ/文 さとうゆうすけ/絵 BL出版

  むかし、ノロウェイというところに女の人(おんなのひと)がいてむすめが3人(にん)ありました。むすめたちはどんな人(ひと)と結婚(けっこん)をしたいか話(はな)していました。
 上(うえ)のむすめは伯爵(はくしゃく)より身分(みぶん)のひくい方(かた)はいやだといい、中(なか)のむすめは男爵(だんしゃく)と結婚したいといいました。末(すえ)のむすめは「ノロウェイの黒牛(くろうし)でもいいわ」とわらいました。ねえさんたちはおどろきました。ノロウェイの黒牛は身の毛(みのけ)もよだつ怪物(かいぶつ)とされていました。
 ある朝(あさ)、おそろしいうなり声(ごえ)がきこえると、大(おお)きな黒牛が末(すえ)のむすめをむかえにきました。黒牛はむすめをせなかにのせて歩(ある)きだしました。むすめと黒牛はくらい森(もり)をぬけ、荒れ野(あれの)をこえて旅(たび)をつづけ…。





石井睦美/作 ささめやゆき/絵 アリス館

 カイくんは6さいになりました。たんじょう日(び)に、ティラノサウルスのぬいぐるみと恐竜(きょうりゅう)図鑑(ずかん)をもらったカイくんは「きょうから、ひとりでねることにするよ」と宣言(せんげん)したのです。「おやすみなさい、カイ」おかあさんがへやを出(で)てしまうと、カイくんはきゅうに心細(こころぼそ)くなりました。うすあかりのなかで、ランドセルがおばけに見(み)えたり、おもちゃがかいぶつに見えました。
 「もういやだよう」とカイくんが思(おも)ったとき、「あんがい弱虫(よわむし)なんだな」どこからか声(こえ)がしました。カイくんが「だれ?」ときくと、
ようせいのティムとこたえました。そして、へんてこなぼうしをかぶり、半(はん)ズボンをはいたちいさな人間(にんげん)が
ふとんの上にあらわれました。
 ティムは422さいのわかい妖精(ようせい)だといったのです。

        低学年から

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ノウサギのムトゥラ~南部(なんぶ)アフリカのむかしばなし~

ビヴァリー・ナイドゥー/作 ピート・フロブラー/絵 さくまゆみこ/訳  岩波書店

 むかし、丘(おか)の中腹(ちゅうふく)のほらあなにノウサギのムトゥラがすんでいました。丘の上に人間(にんげん)が、高(たか)いところにはワシがくらしていました。そのころ人間と動物(どうぶつ)は話(はなし)をすることができました。ムトゥラはつかまらないよう人間にもワシにも注意(ちゅうい)していました。
 ある朝(あさ)ムトゥラが出(で)かけると、木(き)がたおれてきて横(よこ)だおしになりました。たおしたのはゾウでしたが「朝(あさ)めしのじゃまをするな」というのです。ムトゥラはゾウにつなひきの勝負(しょうぶ)をしようといいました。ノウサギがゾウに勝(か)つなんて、ゾウは鼻(はな)から息(いき)をはきました。
 ムトゥラは「明日(あす)、長(なが)いつなで勝負(しょうぶ)しよう」と思い切(おもいき)っていうと、返事(へんじ)を待(ま)たずに走(はし)って
いきました。さて勝負(しょうぶ)は…。




作り直し屋(つくりなおしや)
~十年屋(じゅうねんや)と魔法街(まほうがい)の住人(じゅうにん)たち~

廣嶋玲子/作 佐竹美保/絵 静山社

 作り直し屋(つくりなおしや)という店(みせ)には、ツルさんという魔法使(まほうつか)いが住(す)んでいました。髪(かみ)は鮮(あざ)やかなピンク、つばの広(ひろ)い帽子(ぼうし)をかぶり無数(むすう)のボタンがついたワンピースを着(き)た奇妙奇天烈(きみょうきてれつ)なおばあさんにカナさんは言葉(ことば)を失(うしな)いました。
 その店(みせ)では捨(す)てようと思(おも)っているもの、捨(す)てられないものを魔法(まほう)でカナさんが喜(よろこ)ぶものに作り直(つくりなお)すというのです。ツルさんは子供(こども)のような輝(かがや)く目(め)をして、カナさんが捨(す)てようと思(おも)うものを待(ま)っています。わたしたものは捨(す)てられないお皿(さら)とこわれた馬(うま)のおもちゃ。魔法使(まほうつか)いは両手(りょうて)を広(ひろ)げ、不思議(ふしぎ)な歌(うた)を歌いだし…。
 もし、あなたの前(まえ)にとつぜん不思議なボタン形(がた)のドアが現(あらわ)れたら、そこは…。