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おすすめの本
 

No.640 平成30年11月

鎌倉の家30センチの冒険

 甘糟 りり子/著  河出書房新社

 
 鎌倉に古くから建つ、数寄屋造りと合掌造りが組み合わさった変わった造りの日本家屋で、著者は幼少期から過ごしてきました。木々に囲まれた広い庭での食事会、毎日開催されるイベントごとのように楽しみにしていた五右衛門風呂、住み慣れた鎌倉の町の心落ち着く情景。

 普段は便利なものに囲まれて生活していても、私たちは“自然”と共存しながら生きていているのだと、著者の自然との付き合い方によって気付かされます。少し肌寒くなったこの時期に、ぽかぽかと日当たりの良い場所で読みたくなるエッセイです。

                 (Y.U)


 三崎 亜記/著  文藝春秋 


 サラリーマンのユーリは、実家に帰る途中、なぜか異世界に来てしまいました。バッグには、たまたま30cmのものさしが入っています。異世界の人々は、「ものさしを持つ者こそが、大地の秩序が乱れたこの世界を救う伝説の救世主だ」とユーリに伝えます。力を使うとメモリが減っていくものさし…メモリが無くなる前にこの世界を救い、元の世界に帰らないと肉体は朽ち、魂だけの存在になってしまう!そして、果たさなければならない記憶の片隅に残る大切な誰かとの約束…。

 ふしぎな力が宿るものさしを手に、ユーリはこの世界を救うために立ち上がります。
                 (M.T)




『前世は兎『ウェディングプランナー

 吉村 萬壱/著  集英社

 自分の前世が「兎」だったころの記憶を持つ少女は、人間が生み出した「言葉」という存在に気持ち悪さを感じていました。五十音順に並んだ百科事典を読んでは、ただ法則に従って羅列された言葉たちに気味悪さを感じ、それを生み出した人間にも寒気がするのでした。言葉に捉われず、本能のまま欲望のまま、動物的な生活がしたい…。周囲の人間を見下し、思うがままに操る少女に恐怖を感じると同時に、人間の滑稽さも窺える作品になっています。

 表題作を含め全七編が収録された一冊。この作者ならではの独特な世界観にみるみる引き込まれますよ。  
                (A.K) 

 五十嵐 貴久/著  祥伝社

 多くの女性が憧れるであろう結婚式は、人生の大きな節目です。

 この本は、ウェディングプランナーとして千組以上もの結婚式を見てきた主人公のこよりが、誇りを持つ仕事に真摯に向き合いながら、自身の結婚を真剣に考えていく物語です。
 ひとつとして同じ式はないため、式当日のスムーズな進行を願い、新郎新婦や家族の声に耳を傾けたり、緻密に計画を立てたり…。カップルが最高に輝く式をプロデュースするという繊細な仕事を抱え、夫婦の門出を見守るこよりの心情は揺れ続けます。

                 (R.K)

『独裁者たちの人を動かす技術 『野口光の、ダーニングでリペアメイク
 真山 知幸/著  すばる舎

 人間が文明を持つことにより生まれた指導的立場の人たち。その中から、「独裁者」と言われる人たちが生まれてきました。
 カエサルやナポレオン、織田信長やヒトラーなど、後世に生きる私たちから見ると、なぜあんな残虐な人を支持したのか?と疑問に思いますが、彼らは庶民や部下の気持ちを自分に向かせるための技術を持っていたのです。その技術とはいったいどんなものだったのでしょうか?
 独裁者たちが使ってきた人の心を掴んで離さないテクニックを紹介します。   
    
                 (A.U)
  

 野口 光/著  日本ヴォーグ社

 ダーニングとは英語で「縫う」を意味する言葉で、イギリスに昔から伝わるシンプルな家庭での繕い方法です。一般的な縫い跡を見せないようにする方法ではなく、縫い目の糸が見えるように、また繕った場所が一目でわかるようなカラフルな色で繕うダーニングの方法は、修理をするより買い替えたほうが安くてすむ時代の中で、衣服を大切に着続ける素晴らしさ、そしてなにより“お直し”の楽しさを教えてくれます。衣替えで出てきた処分を迷っている虫食いセーターの穴、本書を見て繕ってみませんか。

                 (Y.M)