平成25年6月号



大和田 伸也/著 講談社

福井市で美術店を営む沢木草介は、ただ一人、ずっと自分の力だけで生きてきたと思っていた。そんな草介の姿を、いつも店先から見つめる少女から「生きてますか。」と一言だけ書かれた手紙が届く。
夫を亡くした後に、すべて自分が悪いと泣いて暮らす母親を見て、生きることの意味を模索する少女との出会いが、草介の過去へとつながり、不思議な巡り合わせが次々に起こってくる。
純粋に誠実に恐竜の卵を探し続ける青年と、両親を事故で亡くしてから、弟のためだけに生きる姉。俳優の大和田伸也さんが、故郷を舞台にして本を書き、監督として映画にも挑戦した作品。



内田 美智子/著 青春出版社

 「親は何があっても子を助けます。自分の命と引き換えに、子を助けることも厭わない。それが親です。でも、親は子より先に死にます。
みなさんは、一人で生きていかなければならない日が、必ずやってきます。
そんなとき、父さん母さんがいなくても、耐えることができますか。何があってもくじけない強い子に育っていますか?」
助産師として多くの子を取り上げ、様々な家族の在り方に直面している著者が、「いのちの大切さ(いただいたいのち・つないでいくいのち)」を若者やその親、親になったばかりの人など、全世代の人々に語りかけています。
「『生』の反対は『死』じゃないと思う。『生まれないこと』だと思う。生まれたものにしか『生』も『死』も存在しない。」
こころに響く言葉が満載の一冊です。



パトリシア・ライリー・ギフ/著 さ・え・ら書房

 彫刻家の父と二人きり、おだやかに生活していたのに、父の仕事の都合で、あまり会ったこともない母方の叔母にあずけられることになったエリザベス。内気な叔母との気詰まりな暮らしの中で、自分にそっくりの少女の肖像画を見つけます。それは、二百年以上も前のアメリカ独立戦争のころ、そこに住んでいた祖先のズィーでした。エリザベスは絵の裏に書かれた図の謎を解き、ズィーの運命を探り始めます。
二十一世紀に暮らす少女の物語と、十八世紀の物語が交錯し、語りつぐ者として選ばれたエリザベスを通して二人の少女が生き生きと描かれます。



朱川 湊人/著 小学館 

父親の定年旅行で、しぶしぶハワイに行った帰り、飛行機事故に遭遇してしまったニートの青年坂木竜馬。
浜辺に打ち上げられて目が覚めたのは、理解不能の村だった。電気・ガス・水道さえない。住民は鎌倉時代のような生活をし、住んでいる子どもの名前は、金太郎、桃太郎、寝太郎・・・。「タイムスリップをしてしまったのか?」と思いながらも、少しずつ村の生活になじみ始める竜馬だったが、やがて、隠された村の秘密が暴かれていく。
文明と未開の間に投げ込まれた青年が、現代の希薄な人間関係に気づいていく様子を、軽妙なタッチで描いた作品。