豆吉(まめきち)は、11歳(さい)になったばかり。江戸(えど)でも評判(しょうばん)の高(たか)い菓子屋(かしや)「鶴亀屋(つるかめや)」に住み込(すみこ)みで働(はたら)いていたが、若旦那(わかだんな)と浅草(あさくさ)で店(みせ)を出(だ)すことになってしまった。若旦那が昨日(きのう)の昼間(ひるま)、店先(みせさき)で客(きゃく)と大げんかしたことが原因(げんいん)で、若旦那は店を追(お)い出され、豆吉がその見張り役(みはりやく)として付(つ)いていくことになったからだ。けんかの内容は、「大福の餅(だいふくのもち)は厚(あつ)いほうがいいか、うすいほうがいいか」たったそれだけのことだった。
鶴亀屋を出てからついに開店(かいてん)の日がやってきた。しかし、しばらくして店にやってきたのは、なんと若旦那と大げんかした辰五郎(たつごろう)だった。