令和2年2月 『逆説の日本史』井沢元彦/著 小学館 「本の詳細」
数年前から私は、井沢元彦氏の『逆説の日本史』という本にはまってしまったのですが、少し耳に違和感のある「逆説の」という意味は、日本史の通説の誤った部分を指摘し、「真実の歴史」を探るという意味合いがあると理解しています。この本の中で井沢氏は、通説が何故誤っているのかを明快に解説し、真実はこうではないかと説得力のある根拠に基づき説明・解説されています。
私は大学受験では日本史ではなく世界史を選択したのですが、その理由の一つ目は、高校で世界史の授業が日本史に先行するため早く勉強にとりかかれること、二つ目は日本史の教科書の内容が無味乾燥であり記憶するだけであれば、世界史のほうが少しだけ味もあるし面白いように感じたことくらいでしょう。
もうすいぶん昔の事ですので、現在では少しは事情が変わっているのかもしれませんが、できれば多くの学生の皆さんが日本史を面白く感じて選択するようになればいいですね。
私は司馬遼太郎氏や吉村昭氏の歴史小説などを読むことで、少しづつ日本の歴史に興味を持てるようになったのですが、決定的だったのはやはり『逆説の日本史』という本に出会ったことです。現在では24巻まで発行されていますが、ページ数も多く内容もある本ですので、全部を読破するには1年位はかかるのではないかと思います。
それから高校生以下のみなさんは、まだ読まないほうが無難かと思います。理由は何となくわかると思いますが、高校を卒業してからじっくり読むようにしてくださいね。
これから時々、何回かに分けて『逆説の日本史』の内容などを紹介したいと思いますのでよろしくお願いします。
令和2年1月 『走り続ける力』山中伸弥/著 毎日新聞出版 「本の詳細」
京都大学iPS細胞研究所の所長をされている山中伸弥氏がノーベル生理学・医学賞を受賞されたのは、もう今から8年前の事になります。ノーベル賞受賞以来、山中氏はよくテレビ等のメディアに出演されるようになったので、皆さんそのお顔はご存じの方が多いと思うのですが、私はメガネをかけた細面のやさしそうな顔に、時々鋭い厳しそうな光を放つ目をお持ちの方だな~と思い、見てました。
この本を読んでみますと、山中氏はやはり仕事の面では非常に厳しい方だったようで、その厳しさは「人の命を救うことに少しでも貢献する」という使命感によるものだということがわかります。
私は武骨な土木関係(農業土木)の人間ですので、一つ一つの細胞の中に遺伝子があり、その遺伝子を構成する素材(塩基?)の組み合わせの微妙な違いにより、各々の細胞の役割が決まってくる事など、気の遠くなりそうな程ややこしく、理解する能力を持ちません。また、膨大な種類がある遺伝子の役割を一つ一つ解明する研究など、考えただけで気が狂いそうになります。全ての細胞に変化するiPS細胞の発見という偉大な成果も、そうした地道な研究の延長線上にあったのでしょう。
この本のタイトルである『走り続ける力』は山中氏の趣味がマラソンであること、研究もまたマラソンと似たようなものであることから付けられたようですが、山中氏はマラソンにはゴールがあるが、研究には必ずしもゴールがあるかどうかはわからないと言われています。ゴールという答えがあるかどうかわからない研究に一生を捧げると考えると、私は二の足を踏んでしまいますが皆さんはいかがでしょう?
それから山中氏は、年に数回米国に行かれるそうですが、彼ほどの人でも米国の優れた研究者諸氏からは学ぶべき所が多く、精神の薫陶にもなるそうです。
よく言われますが日本は一度失敗すればダメという文化だが、米国は何度か失敗しても次に成功すればという考え方(文化)であると。このことを山中氏は「日本は直線的な文化、米国は円の文化」であると言われています。やはり日本に較べて米国のほうが包容力があるというか、おおらかなのでしょうね。
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