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おすすめの本
『たべるノヲト。』  
 松重 豊/著   マガジンハウス

 あのグルメ番組でおなじみの、俳優 松重豊が、自らの食の記憶をもとにエッセイを綴りました。著者本人の語りをそのまま文字に起こしたような、ほのぼのとして味のある文章と、おいしそうなカラーのイラストの組み合わせは、ちょっと疲れて何も考えたくない時に読むのがピッタリ。売れない役者時代を支えてくれた思い出の味や、四季折々の好物、食べものに対する素朴な疑問など、収録された品数は50品以上。目次を見て思い出すのは、昭和の定食屋さんのお品書きです。同世代の人ならずとも、空腹時に読んだら、めまいがしそうな魅惑の料理が次から次へと現れます。さあ!召し上がれ。
(T.K)
『いくさじまた 臼杵戦役後始末』

 清水 朔/著   光文社

 明治十年。西南戦争が始まった大分県臼杵(うすき)を舞台に勤皇臼杵隊予備隊に配属された少年兵、赤嶺煕(ひろむ)の目を通した臼杵戦を描きます。
 大切な人たちが問答無用に失われていく戦の凄惨さ。敵、味方とは何なのか。と戦争中に芽生えていく煕の葛藤。戦場に紛れて行われる不可解な殺人。ミステリの要素もあいまって、誰が信用できる人物なのかわからないまま、物語はノンストップで進んでいきます。
 少年であるはずだった少年兵が戦場という場所でなにを見つめ、感じるのか。タイトルの「いくさじまた」は「戦始末」。この戦の始末を煕はどうやってつけるのか。ぜひ見届けてください。

(Y.M)
『灯台を読む』

 門井 慶喜 ほか/著  文藝春秋

 夜の暗い海を照らし、島国の日本には欠かせない灯台。本書は、現代を代表する小説家たち6人が、全国各地の灯台をそれぞれ巡って綴った紀行文集です。
 エルトゥールル号遭難事件が起きた岬に立つ樫野埼灯台。遠い地の施設で展示されていた古いレンズが、地元の人々の運動で帰ってきた神威岬灯台。そして、「日本の灯台の父」と呼ばれる“お雇い外国人”が建設した数々の灯台。北は北海道から南は四国まで、灯台にまつわる物語を作家たちが紐解きます。

(S.S)
『あの日の風を描く』

 愛野 史香/著  角川春樹事務所

 江戸時代の襖絵を復元する。その当時の人の想いも、その時吹いた風さえも。主人公たちに与えられた課題は、なかなかの難問でした。
 真は、ひょんなことから襖絵の模写制作をすることに。しかし、描くことや表現することの難しさと、今までの自分への葛藤で、なかなか思うように筆が進みません。そんな主人公が、仲間とともに悩み苦しみ、そして色を重ねた襖絵は、一体どんなものになるのでしょう。
 嬉野市在住の作家、愛野史香さんの話題のデビュー作品です。

 (Y.N)

『積ん読の本』

 石井 千湖/著  主婦と生活社

 読書をする人にとってはあるあるの“積ん読”問題。「読みたい!」という気持ちばかりが先走り、未読の本は積みあがる一方…なんて方も多いのではないでしょうか。
 作家・角田光代氏は“積ん読”をしたくない派。しかし時間とは限りがあるもの。読みたくても今は難しい…、なんてこともあります。そんな彼女は仕事をリタイアした後、段ボール1箱分の本を一気読みすることを楽しみにしているそう。人生の楽しみとして“あえて積ん読“をしてみる、というのも面白いですよね。
 この本を読めば、未読の本の山への罪悪感が少し軽くなる…かもしれません。

(A.K)
『潮来を、なぜイタコと読むのか』

 筒井 功/著  河出書房新社

 日本の地名は意味不明なものだらけで、なかには「どうしてこの漢字で、この読み方をするのか」と思うものもあります。本書は、難読・珍地名を中心に取り上げ、こじつけや言葉遊びではなく、地形などを重視し、丁寧にその語源や分布状況を探っていきます。
 「厳(いかめ)しい木」と書く「厳木(きゅうらぎ)」は、ある特定の樹木を信仰の対象にしていた「清ら木」に「厳木」の漢字を宛てたのではないか。非定住民が住まいとしていた自然洞窟や岩陰などの場所に、ホイト、コジキ、ヌスットなどの名称がつくことがあり、有田町の盗人岩洞穴(ぬすどいわどうけつ)も非定住民が生活していたため、この名称がついたのではないか。著者は地名の研究から、私たちの過去の暮らしを明らかにしていきます。

(S.M)