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おすすめの本
No.770 令和6年9月
『山の神々と修験道』  
 鎌田 東二/著  青春出版社

 山岳を信仰対象とし、山で修行する「修験道」。雄大な自然の中に身体ひとつで入り、ひたすら厳しい修行に臨む修験者の姿に圧倒されます。
 日本のシンボルである富士山も修験道のひとつです。太古の昔は「遥拝(遠くから仰ぎ見て信仰する)」が主でしたが、平安後期、末代上人が数百度の登山の後、大日寺を建立したことをきっかけに「登拝(御神徳を拝しながらの登山)」が広まり、現代にも続く修行となりました。
 修験道の隆盛、明治政府からの弾圧、そして再興にいたるまで、修験道の歴史を辿ります。
(A.K)
『日のことこと』

 高山 なおみ/著  信陽堂

 近料理家・文筆家として活躍している著者の日々の生活を大切に綴った一冊です。日記やエッセイといった分野に収まらない、独自の文章表現にそのときの風景や空気感が浮かび上がります。「本とは人のいとなみからあふれた何ごとかをはこぶための器」とあります。その暮らしの中には羨ましさや物足りなさが微塵もなく、この上ない心の豊かささえ感じ取れます。「何ごと」を御裾分けしてもらうことで、本当の豊かさを考え直すきっかけになるかもしれません。読み終わった後は穏やかな一日が過ごせそうです。

(Y.M)
『裁判員17人の声』
 牧野 茂、大城 聡、裁判員経験者ネットワーク/編著  旬報社

 2009年に始まった裁判員裁判。裁判員を務めた人数は2023年12月末時点で12万人以上にのぼります。それだけの人が経験しているのに、実際に裁判員になった人の経験談って、聞いたことありますか?
 この本は、突然裁判員に選ばれた一般市民17人の経験談を集めたものです。心理的負担から不眠になったり、守秘義務で誰にも話せないことにもどかしさを感じたり…。それでも、裁判を終えた後の達成感はひとしおのようです。
 経験者が「よい経験」と感じた割合が96%を超えるという裁判員裁判。私たちの誰もが選ばれる可能性のあるこの制度について、経験者たちの生の声を聞いてみましょう。
(S.S)
『盲導犬と地球を歩く』
 内田 素子/著  自然食通信社

 自身の体験をもとに盲導犬ベルナとの日常を描いた『ベルナのしっぽ』が反響を呼び、注目の人となった郡司ななえさん。子どもの頃から旅好きだったけれど、27歳で視力を失ってから旅する楽しさを忘れていました。2010年、4番目の盲導犬ウランと世界を旅したいと夢を描き、10年間で9か国を巡りました。バイタリティ溢れるななえさんの旅仲間が「うっちゃん」の愛称の著者とその友人の「かんべさん」。そしてななえさんの大切なパートナーの盲導犬たち。これまでの世界各地での貴重な体験や、スリリングな出来事が綴られた本書。3人組にさらなる仲間が加わった旅の様子は笑いがあふれ、読み手も一緒に旅を楽しんでいる気分にさせてくれます。
(Y.O)
『エンジェルはそばにいる』

 フジコ・ヘミング/著  双葉社

 NHKの番組がきっかけでブレイクした著者ですが、それまでは高い評価をされていたにもかかわらず、長い間ピアニストとして認められるには至りませんでした。聴力を失い、お金もなく、無国籍状態の時もあったといいます。彼女にとってピアノは人生そのもの。困難を乗り越え、成功する夢を叶えてからも「私らしく弾く」ことにこだわり、多くの人を魅了し続けました。
 今年の4月に亡くなった著者の残したことばが写真とともに紹介されている本書。語られた言葉は優しくもどこか強く、勇気づけられます。

(A.S)
『銀色のステイヤー』
 河崎 秋子/著  KADOKAWA

 北海道のとある牧場で生まれ、「幻の三冠馬」と揶揄される馬を父に持つシルバーファーン。身体能力は高いものの、性格の難しさに牧場長の俊二は頭を抱えていました。そんなシルバーファーンと、取り巻く人々との絆を描いた小説です。
 架空の物語でありながら、実在するレースや実際に活躍した競走馬の名も登場します。また競馬にかかわる仕事について、専門用語も説明されており、競馬好きの人はもちろん、競馬に興味をもっている人、競馬に詳しくない人でも気軽に手に取ってもらえる一冊です。
(M.S/J)