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おすすめの本


No.607 平成29年6月


『世界の産声に耳を澄ます』『私の名前はルーシー・バートン』
石井 光太/著 朝日新聞出版エリザベス・ストラウト/著 早川書房
 治安が悪い国や、病院から遠く離れた先住民族の村では、どのようなお産と育児が行われているのか。我が子の誕生を機にそんな疑問をいだいた著者は、ミャンマーやホンジュラスといった国々の母親たちを訪ねます。
 昔からの迷信が信じられているために不衛生な環境で育児が行われ、まだ十代のストリートチルドレンが赤ん坊を抱く現実がありのままに書かれます。
 しかし、そんな過酷な環境でも子を思う親の気持ちは強く、それを支援しようと奮闘する日本人たちの存在もあります。親子を取り巻く環境を見つめ、家族のあり方を問うレポートです。
 (S.S)


 主人公のバートン。予想外に長い9週間の入院中、彼女の病室に突然、母親が見舞いに現れました。幼い子どもたちや夫と会えないことが辛かった中で、母親と話をするという思いがけない出来事は、彼女にとって、母親と疎遠だった時間を取り戻すかのような貴重なものでした。
 最初のうちこそぎこちなかったものの、田舎の人々を回想したり、噂話をしたり、病院の看護師に渾名をつけたり・・・。
 他愛もない二人の会話に、母と娘、それぞれの心の動きが感じられます。
 (R.K)


『今日の人生』『さいふまいり ~大宰府天満宮の道すがら~』
益田 ミリ/著 ミシマ社 森 弘子/文 安本 多美子/写真  海鳥社
 今日は、入ったカフェの隣の席の若い女の子の会話に気持ちが明るくなった。また別の日は、なぜだかむなしくなり、その気分を存分に味わった。その別の日には、美味しいものを食べてうれしい気分になった。そして、別の日には肉親の事で涙を流した。
 今日あったこと、今日思ったちょっとしたことを日記風にまとまたコミックエッセイです。
 自分の今日をちょっと振り返ってみませんか?
 (A.U)



 さいふまいり。これは太宰府天満宮に参詣しがてら、周辺の名所旧跡を訪れること。江戸時代には庶民の間に爆発的に広がりました。
 勉強の神様として、そして、子どもの神様として愛され、多くの参拝客が訪れています。厳かな神事と優雅な舞。四季折々に感じる大宰府の美しさは、実はもっと奥が深いのです。
 歴史、美術、文学。知ればもっと行きたくなる!
 さあ、さいふまいりへ。
 (Y.N)


『先生、犬のサンショウウオの捜索を頼むのですか!』『星の子』
 小林 朋道/著 築地書館今村 夏子/著 朝日新聞出版
 時に生物は我々人間には思いもよらない行動をとります。そんな行動を研究している小林教授のゼミでは、たくさんの生物が、研究室や敷地内のビオトープで飼育観察されています。
 タイトルにあるオオサンショウウオは、産卵時の水辺以外どこに生息しているのか分からないため、捜索を犬にさせてしまおうというのです。この試みは、はたしてうまくいくのでしょうか?
 他にも犬を威嚇するヤギ達や殻を奪い合うヤドカリ等、沢山の生き物たちが紹介されています。
 自然豊かな鳥取環境大学を舞台に描かれる小林教授の先生シリーズ最新作です。
 (Y.E)



 あやしい宗教にのめり込んだ両親と、その娘ちひろをとりまく人たちの物語です。
 未熟児で産まれたちひろは病弱で、五才の頃には原因不明の湿疹に悩まされます。真夜中に起きてかゆみをうったえ泣き叫ぶ娘に、両親はなすすべもなく困り果てます。
 父の会社の同僚に相談すると、よろずの病に効くという水があるといいます。その水をわけてもらい、ちひろの体を洗ううちに湿疹がなくなり全快へ…。しかし、これがちひろの両親があやしい宗教にはまっていくきっかけになっていきます。
 家族・世間・信仰などさまざま要素が絡み合い、あやしい宗教は家族をゆっくりと崩壊させていきます。静かにぐいぐいと引き込まれる作品です。
 (T.O)


 

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